保健指導を考える

第8回「特定保健指導のスタートにあたって2」

エア・ウォーター健康保険組合 主任
日本禁煙科学会理事
富永典子
とみなが・のりこ
1983年北海道B市に保健師として就職。B市退職後、ほくさん健康保険組合(現;エア・ウォーター健康保険組合)に保健師として就職し、現在に至る。
2007年3月、奈良女子大学大学院修士学位取得。
エア・ウォーター健康保険組合 保健師 富永典子
<論文>
  • 1.短報「2泊3日合宿・体験学習形式による肥満教室の効果‐減量効果の継続性について-(第1報)」
     「肥満研究」 Vol.9 No.2 ;177-179 (2003.9)
  • 2.短報「肥満教室が外来医療費に及ぼす影響について」
     「肥満研究」 Vol.10 No.3 ;314-316 (2004.12)
  • 3.短報「働く世代の男性の禁煙が体重増加に及ぼす影響」
     「肥満研究」 Vol.12 No.2 ;163-165 (2006.9)

特定保健指導のスタートにあたって2

前回は、「○人寄れば文殊の知恵」をキーワードとすることをお話ししました。
このSNS「保健指導向上委員会」の中で盛り上がった話題のひとつに、
ある方が書かれた、「医療とQOL」という日記があります。
(※リンク先は、保健指導向上委員会SNS内のページです。会員の方以外はご覧いただけませんので、ご了承ください。)
その末尾にはこう書かれていました。

「その方のより良い人生に資するものになりますように。」

目指すのは、「その方のより良い人生に資すること」

今回の新制度がめざすのは、糖尿病をはじめとしたメタボ関連疾患を予防し、将来、それに伴うであろう医療費の抑制です。

どのような方であれ、病気発症はないほうがいいし、もし発病しても、重症化や合併症は避けたほうがいい、ということに反対を唱える方はいないでしょう。病気療養は個々の生活の在り方を変えることになります。今まで好き勝手に食していたものが制限され、またゴロゴロ休みたいのに運動を勧められる。そんな「させられ感」が対象者の気持ちに生じても不思議ではなく、「血糖を下げないと、合併症が起きますよ!」と、脅迫的な指導が続く限り、「させられ感」は永遠に続くことでしょう。

すでに多くの専門職の方々は気づいています。ご本人のやる気を高めるには脅かしや一方的な指導では効果がないと。そこで、ここ最近、保健業界に登場したのが「行動科学に基づいた行動療法」であり、「コーチング」や「アサーティブ」といったコミュニケーション・スキルです。そして、それらのスキルを用いて目指すのは、「その方のより良い人生に資すること」であり、「その人らしい豊かな人生設計」です。

影響力を踏まえたうえでの支援体制

私達は、先に健診のデータを目にしてから、その次に対象者と実際に出会うこと多いですね。

そこで出会う方々は、被保険者・被扶養者だったり、従業員だったり、住民だったり、支援者が所属する組織によって呼び名が変わります。またその方自身は、○○ちゃんのお父さん・お母さんだったり、△△部署の課長だったり、□□町内会の役員だったり、☆☆さんの娘・息子・お孫さんだったりと、多種多様な環境の中でいろいろな役割を担って生活しています。

目の前の方の背後には、数多くの方々とのつながりがあるということを踏まえた支援が必要となります。「わずか20分の面談で、そこまで網羅したサポートはできない」と思うでしょうが、どのような内容であれ、みなさんの支援はその方の背後にいる方々に、必ず大なり小なりの影響を与えます。目の前の方だけで途切れることはありません。むしろ、そういった影響力を踏まえたうえでの支援体制が、単なるハイリスクアプローチを、ポピュレーションアプローチへと広げていくことを可能にします。

最後に

この制度を単なる「いたちごっこ」にしないために、ここにいる多くの仲間達が、個々へのアプローチと同時に、周囲環境へのアプローチ策が展開できるといいなと思います。それこそ、私達保健師の腕の見せどころだと、私は思います。がんばりましょうね。

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