保健指導を考える

第1回「保健指導に期待すること1」(月刊地域保健6月号より転載)

厚生労働省健康局総務課保健指導室
保健指導専門官 剱物祐子
けんもつ・ゆうこ
2000年、厚生省(当時)入省、老人保健福祉局(現老健局)老人保健課。02年、医薬品機構(現独立行政法人医薬品医療機器総合機構)信頼性保証部、05年、厚生労働省老健局計画課、07年4月より現職。
厚生労働省健康局総務課保健指導室保健指導専門官 剱物祐子

保健指導に期待すること

はじめに

「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日 政府・与党医療改革協議会)を踏まえ、「生活習慣病予防の徹底」を図るため、平成20年4月から、高齢者の医療の確保に関する法律により、医療保険者に対して、糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査及び特定健診の結果により健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導の実施を義務づけることとされ、本年4月に標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)が公表されました。

本プログラムの特徴は、科学的根拠に基づき健診項目の見直しを行うとともに、生活習慣病の発症・重症化の危険因子(リスクファクター)の保有状況により対象者を階層化し、適切な保健指導(「情報提供」「動機づけ支援」「積極的支援」)を実施するための標準的な判定の基準を導入したことであり、健診により把握された保健指導の対象者に対し、個々人の生活習慣の改善に主眼を置いた保健指導が重点的に行われることとなります。

従来地域保健では、老人保健法に基づき市町村の衛生部門が保健事業を実施し、健診は医療機関や健診機関に委託されている場合も多いものの、保健指導はほとんど市町村において、保健師等が関係者の協力を得て実施してきました。職域では、健診は同様に委託されている場合も多いですが、保健指導は事業所に所属する産業医や保健師等が、あるいは専門職がいない事業所の場合は、総合健保組合や社会保険健康事業財団等が実施してきましたが、実施体制には格差が大きいという状況がありました。

平成20年4月からは、健診・保健指導は、標準化されたプログラムに基づき、医療保険者が実施することになります。

ここでは、本プログラムにおける保健指導について概説し、その中ではどのような保健指導が期待されているのか、特に保健指導の実施者となる方たちに対し、述べたいと思います。

保健指導の考え方・計画・目標設定

まず、保健指導の基本的考え方を、表1に示します。生活習慣病予備群に対する保健指導の第一の目的は、「生活習慣病に移行させないこと」です。従って、そのための保健指導とはどのようなものか、どのような技術が必要であり、どういった体制が求められるのかをまず考えておくことが重要です。生活習慣は個人が長年築いてきたものであるので、改善すべき生活習慣に自ら気づくことが難しく、また、対象者自身が行動変容は難しいと認識している場合が多いことを念頭に置いて支援を行う必要があります。支援においては、特にポピュレーションアプローチや社会資源を有効活用すること、また、地域・職域において生活習慣病に関する自助グループ等を把握し、健診・保健指導の機会にこれらを周知することを、積極的に実施していただきたいと思います。

表1 保健指導の基本的考え方
保健指導の目的
対象者自身が健診結果を理解して体の変化に気づき、自らの生活習慣を振り返り、生活習慣を改善するための行動目標を設定するとともに、自らが実践できるよう支援し、そのことにより対象者が自分の健康に関するセルフケア(自己管理)ができるようになることを目的とする。
生活習慣改善につなげる保健指導の特徴
健診によって生活習慣病発症のリスクを発見し、自覚症状はないが発症のリスクがあることや、生活習慣の改善によってリスクを少なくすることが可能であることをわかりやすく説明することが特に重要 。
対象者は、保健指導の際の個別面接や小集団のグループワーク等において、保健指導実施者やグループメンバー等と対話をすることにより、客観的に自己の生活習慣を振り返ることで改善すべき生活習慣を認識でき、その気づきが行動変容のきっかけとなる。
対象者が現在の状況を客観的に把握できる機会を提供するとともに、実行していることに対しては励ましや賞賛するなど自己効力感を高めるフォローアップが重要。
必要とされる保健指導技術
保健指導の技術として、カウンセリング技術、アセスメント技術、コーチング技術、ティーチング技術、自己効力感を高める技術、グループワークを支援する技術などがあり、これらは行動変容等に関する様々な理論から導き出されたもの。
保健指導ではこれらの技術を統合させて、実践に生かすことが求められる。
ポピュレーションアプローチや社会資源の活用
生活習慣は生活環境、風習、職業などの社会的要因に規定されることが大きいことから、生活の場が健康的な生活への行動変容を支え、または維持できる環境であることが必要。
保健指導においても、ヘルシーメニューを提供する飲食店、ウォーキングロード、運動施設、分煙している施設、健康に関する仲間づくりや情報提供などのポピュレーションアプローチの環境づくりとともに、健康づくりに資する社会資源を積極的に活用することが重要。
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