特集-インタビュー

第21回 早稲田大学スポーツ科学学術院教授
岡 浩一朗先生が語る
座りすぎは危険!  「立つ」ことを健康行動のスタートに
〜自然に健康になる職場・地域の環境づくりをめざして〜

岡 浩一朗先生 早稲田大学スポーツ科学学術院教授
岡 浩一朗 先生

1999年に早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了し、博士(人間科学) の学位を取得。早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所) 介護予防緊急対策室主任を経て、2006年4月に早稲田大学スポーツ科学学術院に准教授として着任。2012年4月より現職。専門は、健康行動科学、行動疫学。

座り続けることの健康リスクとは?


健康づくりというと「体を動かす」ことに注目しがちですが、座り続けることの危険性について、岡先生は警鐘を鳴らされていますね。

全世界で身体活動不足は死亡原因の4位、日本では3位と報告されています。WHOは「身体活動不足が大流行している(pandemicな状態)」とまでいっています。身体活動不足イコール座位行動の増加ではありませんが、その多くを占めていることは確かです。

身体活動による消費エネルギー量を1960年代と比較すると、これまで健康によいといわれてきた中高強度の身体活動量(運動)は、それほど減っていなくて、ちょっとした低強度の身体活動量が減ってきています。そして急激に増加しているのが座っている時間なのです。

世界的に見ても日本人の平日の座位時間は、最も長いことが知られています。
さまざまな研究調査からも、成人の1日の日常生活(覚醒時間)の3分の2(約55〜60%)近くが座位や臥位で生活しています。ちなみに中高強度身体活動は5%程度、低強度身体活動は35〜40%となります。

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成人の一日の覚醒時間における行動割合


私たちはそんなに長く座っているんですね。座りすぎると健康にはどんな影響を及ぼしますか。

日本人を対象にした研究では、1日8時間以上の座位行動は男性の総死亡やがん死亡リスクをあげることがわかっています。
他にも心血管疾患の死亡リスクになることや、肥満、糖尿病、動脈硬化などのメタボリックシンドローム、高齢者なら運動器の機能低下をはじめ、肝疾患、肺塞栓、COPDなどの疾病リスクにも影響を及ぼしています。

こうした多くの研究が出てきていますので、座りすぎが健康へ悪い影響を与えるというエビデンスは確実といっていいでしょう。今後はどれだけ座っているとどれだけリスクが高いかという研究が進んでいくようになるかと思います。
ちなみに、海外の研究では、1日4時間以上のテレビ視聴による座りすぎは総死亡や心血管疾患死亡のリスクを上げ、1時間視聴するごとに平均余命が22分短くなるといわれています。


恐ろしい数字です。確かに座っている時間が長いですが、その代わりに、運動をしているからという人も多いと思いますが…。

そういう人を「アクティブカウチポテト」と呼びます(笑)。
ウオーキングやジョギングなど、比較的しっかりと身体を動かしていますが、他の時間はほとんどデスクワークなどで座りっぱなしという人ですね。
実はこのような人も、健康リスクが高いという結果が報告されているのです。最近の研究(レビュー)では、座りすぎによる総死亡リスクを低減させるためには、1日60〜75分の中強度身体活動が必要といわれています。


座りすぎで、運動の効果が相殺されてしまうのですね。やはり、座りすぎを改善したほうがいいんですね。

もちろん、歩いたり、運動したりすることは、素晴らしいことで、やりすぎでなければ健康によいことは間違いありません。ただ、座りすぎによる健康リスクを下げることは大切なことですし、現実的に取り組みやすいのではないかと思います。

先ほどもお話ししましたが、日本人は座っている時間が非常に長くなっています。
全自動洗濯機、ロボット掃除機などの登場により、今まで体を動かす必要のあった家事がどんどん減ってきています。今や家の中では電気をつけるのもテレビのチャンネルを変えるのもリモコンでピッとしてしまえばいいですからね。

社会はどんどん体を動かさない便利な生活に「高価値」をおいて進んできているように感じます。それが結果として、必要以上に人から身体活動を奪ってしまいました。


確かに、「便利な生活」で体を動かさなくなっています。なかなかこの便利な生活を手放すことができないかと。

こうした社会の流れを変えるのは容易ではありません。
とくに注目したいのが仕事に伴う身体活動です。1960年代頃と比べて、仕事時間での身体活動が減り、それに反比例して座位時間が増加しています。

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生活様式の変化に伴う身体活動量・座位時間の推移

社会構造が変わり、現在は働く人の6〜7割がデスクワーカーで、その働く時間の6〜7割が座位時間という結果が出ています。仕事内容も、電話やメール、パソコンで完結してしまい、その積み重ねでできてしまう。気がつくと、何にも体を動かさなくなる状態になっている、これが問題です。


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