特集-インタビュー

第14回 独立行政法人国立精神・神経センター 認知行動療法センター
センター長 大野裕先生が語る
保健指導、日常にも応用可能な認知行動療法

大野裕先生インタビューつづき

最近「新型うつ」という言葉をよく聞くようになりましたが、先生はどうお考えですか?

独立行政法人国立精神・神経センター認知行動療法センターセンター長 大野裕先生じつは私は「新型うつ」の存在には疑問をもっています。新型うつの一番典型的なものは、会社には行かれないが趣味に熱中したり、旅行に行ったりはできるという人ですが、昔からまわりに一人くらいはこういう人がいたと思うんです。メディアで取り上げられたり、企業内の困難事例となっているため、増えているように感じるのかもしれません。

問題は、これにどう対処するかということですが、医療の問題と企業の労務的な考えを混在させないことが重要だと思います。うつの治療は医療機関で行うことですし、会社には労務管理の問題があります。冷たいかもしれませんが、会社として認められることと認められないことを明確にしておくことが大切ではないでしょうか。これはうつ病に限らず、他の病気の対応でも同じことだと思います。


職場の健診でストレスチェックが義務化されることになりますが、考えられるメリット、デメリットはどんなことでしょうか?

ストレスチェックだけを義務化しても、メンタル疾患の方をすべて拾うということはなかなか難しいと思います。そもそも、全ての人が正直にチェックテストに答えてくれるか、という問題がありますよね。ただし、こういう症状には気をつけたほうがいい、ということが自分でわかりますから、啓発の一種にはなるのではと思います。

問題なのは、チェック後の体制をどう作っていくかです。個人情報をどう守るか、どこまで情報を共有できるか、どこまでその人にアプローチしていけるか、仕組みづくりが重要になると思います。


チェック後に医師や保健師の面談を受けるか受けないかも本人の自己判断によりますよね。職場での対応は難しいものがありますね。

職場では、医療機関につなげたほうがいいのかどうかの判断が重要になると思います。職場内で環境や仕事を変えると改善するのか、それとも早めに医療機関につないだほうがいいのか、見分けることが必要になります。

そのときのポイントは、病名は考えないほうがいい、ということです。診断としての病名は医師が決めればいいことですから、企業の専門職の方が相談にのる場合には、その方の症状の程度と持続期間を聞き取ることがもっとも大切な役割になると思います。程度は、仕事や日常生活に支障が出ているかどうか、期間は1ヵ月が目安です。情報提供や職場内での面談で対応しても1ヵ月状況が改善しない場合は、医療機関につなげたほうがいいでしょう。


最後に、サイトをご覧になっている専門職の方々にひとこといただけますか?

独立行政法人国立精神・神経センター認知行動療法センターセンター長 大野裕先生専門職の方は日々、大変な業務をこなされていると思います。でも、専門職だからといって何でもすべてできるわけではありません。支援がうまくいかないときもあって落ち込むこともあるでしょう。そんなときは、「〜すべきだ」という考えを変えて、ときには対象者の方の問題とわりきって対応することも必要です。

現代の人々は、忙しすぎて走り続けているという感じがします。たまには立ち止まってみることが大切ですよ。


取材後記

終始、にこやかにお話ししてくださった大野先生。先生の健康の秘訣は、睡眠をとること、歩くこと、ぼんやりする時間を持つことだそうです。文系的なことがお好きで精神科を選ばれたそうですが、温かなお人柄にお話ししているだけでも癒されました。
来年2月からは、高田馬場にサテライトを作り、多職種向けの様々な認知行動療法研修会を行われる予定だそうです。興味のある方は、ぜひご参加ください。

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