特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第50回は、三井 洋子さん⇒石澤 美代子さん へのバトンです。

第50回
「『なりたい未来』のお手伝い 〜あなたの食事は未来形〜」

石澤 美代子(いしざわみよこ)
(SNSハンドルネーム:みっち)

長野県短期大学を卒業後、病院に4年勤務。国家試験を経て管理栄養士を取得。その後(社)長野県長野総合健康センター、(公財)長野県健康づくり事業団に18年勤務し健康づくりや食育、病態栄養指導など栄養指導業務に従事。その後、松本大学内に開設された地域健康支援ステーションの管理栄養士として転職。並行して上越教育大学大学院にて教育学修士を取得。現在は、「心が動く栄養指導」をモットーに教材開発や、地域の栄養指導、特定保健指導、高校運動部栄養サポートなどに取り組みつつ、未来の管理栄養士の育成に携わっている。

SNS保健指導向上委員会 みっちさんのマイページはこちら

石澤美代子さんからのひとこと
前回ご執筆の三井さんからは、「“働きざかりのいきいきセミナー”を一緒につくった仲間として、現在は(管理栄養士養成課程をもつ)松本大学にて地域との協同事業を展開したり、学生の指導をしたりしているので、どんな管理栄養士を育てたいかを教えていただきたいです。」とのことでした。管理栄養士とその育成についてお話しできるよい機会と考え、拙稿ながら投稿させていただきます。タイトルにも記した“未来”をキーワードに書いてみたいと思います。

管理栄養士をめざす?!

私が中学・高校を過ごした頃はキャリア教育があまり浸透しておらず、職業選択は周囲の勧めによるものが多かったように思います。私も、父の勧めにより「栄養士」をめざし短大に入学、その時の恩師の勧めで「管理栄養士」をめざしました。

栄養士から管理栄養士になる場合は2年間(当時)の栄養士実務経験と国家試験合格が求められ、働きながらの受験勉強は本当に大変でした。ですが合格できたのはただひとつ、「これからの時代は管理を持っていないと」という恩師の叱咤激励でした。いま私が特定保健指導やスポーツ栄養サポートなどさまざまな仕事ができているのは「管理」を持っていることに因ることが多いです。働いてみて管理栄養士という免許の偉大さを実感しています。あの時の恩師の言葉が私の未来を決定してくれたと言っても過言ではありません。
(この記事がUPされる頃は、3月に実施される管理栄養士国家試験に向けて勉強中の方もいらっしゃると思います。ぜひ頑張ってください。あなたの仕事の未来が変わります。)


病院から健診機関へ 〜コーチングとの出会い〜

最初に勤めた病院では透析患者さんに関わることが多く、若かった私はいくつもの衝撃的な場面を見て、耐えきれない思いをしました。中でも、50代の男性が、70代の自分の父親から腎移植を受け(もちろんその親子にはさまざまな葛藤がありました)、私に手術終了の報告をしてくれた時の、その方の、戸惑いながらも「これで海外旅行に行ける」と透析からの解放感を喜ぶ姿に、涙がこらえきれませんでした。きっとその方は多くの夢を我慢してきたのだと思います。それが叶ったのです、父親からの移植という形で。
「透析になる前になんとかできないか」。そう思い、病院を辞し、私は健診機関へ転職しました。健康診断という自分を振り返る絶好のタイミングで栄養指導を行えば、その方の未来を変えることができるのではないか、そう思ったのです。

健診後の栄養指導は、充実していました。特に私が勤務していた長野県長野総合健康センターは昭和50年に全国に先駆けて開所した「負荷心電図検査が行え、即日判定・即日個別指導ができる」施設でした(全国からの見学も多かったと聞きます)。例えば、今日血糖値が高いと判明した受診者さんに対し、その方の食事調査結果に基づき午後には血糖値改善のための栄養指導が個別に行えていたのです。受診者さんは今日から改善できるわけです。その後、県の外郭団体統廃合により勤務先は長野県健康づくり事業団に変わりましたが、その即日個別指導は引き継がれ、多くの方に栄養指導を行わせていただきました。「今日からやってみましょう。来年また結果を聞かせてくださいね」。そう言って送り出した方はのべ2万人になります。街やスーパーなどで会うと、その後の取り組みや改善したことを報告して下さるのが嬉しかったです。管理栄養士とは人の役に立てる仕事だと、そう思いました。

また並行して、健康づくりの“啓発”の講師の仕事が来るようになりました。いわゆる「未病」の病態だけれど将来を見越して健康づくりや介護予防のための栄養指導を集団講座で行うというものです。中でも画期的だったのが、本リレー前者の三井洋子さんが当時ご勤務だった長野県須坂市との共同で行った産業界への「働きざかりのいきいきセミナー」です。健康づくりにおいては後手に回りがちな働きざかり世代を健康にしておくことで、将来の健康確率を高める(それはいわゆる国保の医療費減少にも繋がる)取り組みで、飲食店にご協力いただいたバイキング講座、30分の個別栄養指導等で関わらせていただきました。この時に「コーチング」と出会いました。セミナーの第1回に、保健師である三井さんのコーチングによる目標設定があったのです。「あなたはどうなりたいのか」を導いていただいたおかげでその後の栄養教育が順調に進んだことを今でも覚えています。この時から「未来はその方が決める」→「そのなりたい未来のお手伝いを食事面から行うのが管理栄養士」だと思うようになりました。

そして講座の中でよく言うようになったフレーズがこれです。

「あなたの体は過去に自分で食べたものでできています。未来の体を作るのも自分自身の食べ方次第。今日はこんなに動いたから、と過去を振り返って食べるのではなく、自分自身はどうなりたいかを考えて、“未来形”の食事を心がけませんか。」


「心が動く」教材開発と教育プログラム

この頃から「心が動く栄養指導」を意識するようになりました。
何をどう改善したらよいのかは、実は対象者の方こそがわかっていることが多いです。心が動けば行動が変わります。「お酒を減らせばいいんだろうな…」「原因はお菓子かな…」などご本人が気づいていることを、「じゃやるか!」と思ってもらうためにはどうしたらよいか、そのプログラムを考えるようになりました。いわゆる「しかけ」です。札を持って○×クイズを行ってもらったり、85僂里劼發琶囲を測ってもらったり、フードモデルや食品の包装パッケージなどを提示したり、試食を行ったり、自分で必要エネルギー量やご飯量を計算してもらったり…。ゲーム感覚で参加できるものだったので概ねご好評をいただき、参加者の方から「へぇ―!!」と言っていただけて、「やっぱり原因はこれか」、「じゃやるか」という、感動→原因理解(気づき)→行動決意の流れを構築することができました。また、ゲーム性を持たせ楽しみながら自主的に学べる教材を開発したい、そしてそれの評価をきちんと行いたいと思い、上越教育大学大学院へ進学しました。こちらもご好評をいただき、大阪の株式会社いわさきから「食育皆伝すごろクン」という商品になり全国販売していただいています。

感心よりも感動を。
心が動けば行動が変わる。

指導内容構築や教材開発のとき、いつも心の中に置いています。


管理栄養士を育てたい!

健診機関での業務の中で多くの方に栄養指導をさせていただき、その方の“なりたい未来”のお手伝いができたのかな、と思います。そのまま勤め続けることも考えましたが、ある時某給食会社の栄養士・管理栄養士だけの研修会で講師をした時のアンケートに「管理栄養士っていい仕事だと改めて思えました」と記入があり、私でも後進の育成に役立てるのだと嬉しく思ったことがあり、転職を考えるようになりました。

同じ仲間を育てたい、そしていつか一緒に仕事をしたい。
ちょうどその頃松本大学が、文部科学省教育GP事業の採択に伴い地域健康支援ステーションを開設することとなり、そこへの就職が決まりました。そこでの私の使命は、地域で栄養指導を行い地域貢献を行うこと、その時に管理栄養士をめざす学生を帯同し現場を体験させ学内学習へフィードバックさせること、先輩管理栄養士としてのロールモデルになること、でした。その使命を受け、平成22年4月から松本大学に勤務し、現在までに栄養指導は約100件、メニュー提案や商品開発は約50件行い、関わった学生は500人になります。学内のいくつかの授業でも「現場の管理栄養士」として話をさせていただいています。

特に学生に伝えているのが、管理栄養士の専門性です。例えば調理師さんと管理栄養士の違いだったり、保健師さんとの違いだったり。特に栄養指導の面においては、保健師さんとの協同が多くあります。私は、前述働きざかりのいきいきセミナーから、保健師さんが未来を定める支援を行い、管理栄養士がさまざまなしかけや数値・数量を以って食事面での支援を行う、そんな流れを学びました。数値・数量とは、検査値や、目標となるエネルギー量や栄養素量だったり、それらが摂取できる食品の重量などを指します。○圓笋擦燭い覆蕁1日当たり○kcal削減で、それは食品Aでいうと○gで、食品Bだと○gです、というようにさまざまな「数字」を紹介しながら栄養指導を行うのです。この数値・数量の引き出しをどれだけ持っているかで栄養指導の奥深さや有意性が決まったり、“管理栄養士が”栄養指導を行う意味があると思っています。

学生たちは、4年間の学業の中で挫折したり夢を失いがちです。そんな時に現場の栄養指導を通してその方のなりたい未来のお手伝いを体験したり、私のような管理栄養士の仕事を通して「管理栄養士っていい仕事かも」と思ってもらえたらと思いますし、多くの学生が管理栄養士として就業し、給食の現場では調理師さんと、指導の現場では保健師さんと協同しながら専門性を発揮し、対象者の“なりたい未来”の食応援団として活躍してもらえたらと思っています。


保健指導向上委員会事務局より

ほぼ毎月連載してきた「リレー連載」も50回を迎え、スタートから50人の会員の皆様にバトンが渡していただきました。リレー連載は、節目の50回にて、いったん休載し、春に向けてバージョンアップした新企画を考えて参ります。長い間ご愛読いただき、ありがとうございました。

バックナンバー
過去の連載「保健指導を考える」を読む
保健指導のアウトソーシングに関するアンケート調査 結果レポートの発表です
第8回スキルアップ研修会報告ページ
坂根直樹先生新連載「ストレス方程式で解決!簡単ストレスマネジメント」
血糖自己測定器と院内専用グルコース分析装置の違い
脱マショウノオンナ 『保健師だより』私流のコツワザ集
ニッポンの健康づくり 辻一郎先生 津下一代先生 インタビュー
協力企業
ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!
ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!

保健指導向上委員会の運営を応援してくれる協力企業を募集しています。詳しくは、こちらまでお問合せください。

ad@hokensidou.net
地域保健
東日本大震災に関する情報 地域防災力向上を目指す情報サイト「webside.jp」
SNSログイン
保健指導向上委員会SNSにログインする
SNS新規登録SNSについてもっとくわしく
委員会からのお知らせ