特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第21回は、洙田靖夫さん⇒岩室紳也さん へのバトンです。

第21回
「多くの人の支えが、いまの『岩室紳也』をつくった!」

医師
岩室 紳也(いわむろ しんや)
(SNSハンドルネーム:モトメタ)
学費がかからないということで自治医科大学入学。へき地医療に従事するも義務年限後は泌尿器科専門医になるつもりが保健所兼務中に公衆衛生の面白さに目覚める。性教育、エイズ教育から健康教育にのめり込み、自らコンドームの達人と名乗り、性感染症は性生活習慣病ととらえ、HIV/AIDSの診療も手掛ける。そして、なぜか健康危機管理におけるボランティア等の研究班でドラえもんさんと一緒になり、このようなリレー連載の仕事が増えた(笑)。

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岩室紳也さんからのひとこと
洙田靖夫さんから「行動変容について事例紹介や、公衆衛生の専門家としてヘルスプロモーションについてもご教示いただきたい」とのこと。岩室紳也という事例を通して、震災支援を含めたヘルスプロモーションについてキータッチのままに書かせていただきます。

できる人ができることを

東日本大震災後、3日間は頭の中をいろんな思いが駆け巡るだけだった。このような時にこそ仲間、一緒に考えてくれる人がいることのありがたさを再認識した。ほとんどの仕事がキャンセルとなり、めったに顔を出さない事務所にみんなが集まった時に、被災地支援のための情報を集約したHPを作ろうという話になった。HIV/AIDSを中心とした情報提供のため、自らのHP(紳也’s ホームページ:http://homepage2.nifty.com/iwamuro/)を立ち上げていた経験を活かし、公衆衛生関係者の情報共有用のサイトとして運営していた公衆衛生ねっと(http://www.koshu-eisei.net/)内に災害時の公衆衛生(http://www.koshu-eisei.net/saigai/index.html)というサイトを立ち上げた。

私の基本的な考えは次の通り。

自分ができないことを他人に押し付けない
人は他人の経験に学ぶ
だからこそ、いろんな人がいろんな人とつながる必要がある

ネットの向こうには本当にいろんな人がいて、いろんな情報をもらえたからこそ、それなりに充実したサイトになった。これも岩室紳也と災害ボランティアという考え方をつないでくれた、そしてドラえもんさんとモトメタをつないでくれた尾島俊之先生(浜松医科大学健康社会医学講座)のお蔭である。


コンドームの達人が被災地支援に関わった理由

今やYouTube(http://www.youtube.com/watch?v=4ruLVp1ERE0)で再生回数240万件を超えるコンドームの達人が今回の東日本大震災の被災地陸前高田市に支援に入らせていただくきっかけはやはりコンドームだった。自他とも認めるコンドームの達人になっていた私を脅かす存在であるかのようなキャッチフレーズ、未来型コンドームの達人(http://homepage2.nifty.com/iwamuro/mirai.htm)というホームページを見つけたのが10年前の2001年。「誰だ、お前は!」と連絡を取ったら、1999年に国立公衆衛生院で私のエイズの講義を受講した、当時岩手県職員の男性保健師、佐々木亮平氏だった。公衆衛生院の講義中、私が「この会場で包茎の人、手を挙げて」と言ったら、彼しか手を挙げなかったとか。彼が「旧型コンドームの達人の岩室紳也」に変わるべく、「未来型コンドームの達人」を名乗り、岩手県内でHIV/AIDS予防教育を、生活習慣としてのコンドーム装着術を啓発し続けていた。その後陸前高田市に3年間出向する中で、私やAIDS文化フォーラム in 横浜(http://www.yokohamaymca.org/AIDS/)で毎年話をしてくれている北山翔子さん(http://www.amazon.co.jp/dp/4314010665)などを招いてくれていた。2010年に陸前高田市と岩手県を退職し、日本赤十字秋田看護大学の教員になった佐々木氏に発災後電話を入れたら「陸前高田市で同僚だった保健師9人中6人が流され、とにかく支援をしなければと思い毎週のように入っているとのことだった。

愛弟子が頑張っている。岩室紳也にできることはと考え、大学の同級生だった岩手医科大学公衆衛生学教室の坂田清美教授(アンケート入力支援)、盛岡中央保健所長の六本木義光所長(ボランティア調整)、公衆衛生活動で20年来の友人の岩手医科大学口腔保健教室の田沢光正先生(アンケート分析)らに協力を呼びかけ、とにかく陸前高田市に向かった。そこで出会った陸前高田市の戸羽太市長(http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/)は何と青年会議所時代に未来型コンドームの達人から認定書をもらっていた。すなわち、佐々木亮平氏は私の弟子なら、戸羽市長は私の孫弟子ということになる。孫弟子の窮地にできることをするのは家元の責務として今もできることをさせていただいている。詳細は復興に向かう陸前高田市の今(http://www.koshu-eisei.net/saigai/rikuzentakada.html)参照。


「モトメタ」の由来

ハンドルネームの「モトメタ」はまさしく「元メタボリックシンドローム」からとっている。今より12キロ太っていた岩室紳也はそもそもメタボリックシンドローム対策に大反対だった。生活習慣病対策を前面に打ち出された健康日本21で上手く行っているのは8020運動だけだ。その8020運動は検診や保健指導といったハイリスクアプローチではなく、徹底したポピュレーションアプローチだけで目標値をクリアしている。ここで捕捉しておくが、ポピュレーションアプローチは社会に蔓延するリスクを克服するためのアプローチであり、普及啓発や健康教育だけを指すものではない。

では、モトメタはどうしてやせる気になったのか。久しぶりに会ったある保健師さんが「岩室先生、顔、変わりました。何となく醜くなりましたか」と言ってくれた。「あんたに言われる筋合いはない」となぜかやせる気になり、半年で12キロやせた。どうやって? 当たり前のこと。(酒を)飲まない。(高カロリーなものを大量に)食わない。(適度な)運動する。こんなことは誰でもわかっている。しかし、なぜできないのか。モトメタにはその気にさせる環境が、関係性がなかったのであった。


性感染症は性生活習慣病

友人の北山翔子さんがHIVに感染していることがわかった時、「どうして二人で検査を受けなかったのか」とか、「どうしてコンドームをつけなかったのか」と迫っていた自分がいる。しかし、自分が子どもをつくろうと思った時に、当時はHIV/AIDSはなかったものの梅毒の検査も受けずに、コンドームをつけずに子どもをつくろうとしていた。彼女が感染したアフリカでは「100人に1人がHIVに感染しているんだよ」と迫ったら、「知識が邪魔した。だって99人は感染していないでしょ」と言われ、返す言葉を失った。

知識があっても役に立たない理由は何か。健康づくりの基本であるIEC。すなわちInformation(情報)をどんなにEducation(教育)しても、増えるのは知識だけ。その知識を活かすにはCommunication(他人との関係性を通した学び)がなければ生きる力(Life Skill)は育めない。こう教えてくれたのが現保健医療科学院の林謙治院長だった。


ヘルスプロモーション=関係性の再構築

公衆衛生関係者なら誰もが知っているヘルスプロモーションの図を思い出して欲しい。「生きづらさ」というボールを押しながら坂道を登って行くのが人生だとすると、それを後押ししてくれる仲間、関係性があって初めて自分を振り返り、時には行動変容ができる。しかし、全員が行動変容ができるとは限らないので、環境を変える、坂道の勾配を下げる動きをする人も必要である。

何人もの名前を挙げさせてもらったが、岩室紳也が今こうやって原稿を書いているのも本当にいろんな人がいたからこそである。人間は人と人との間でしか生きられない存在である。今回の震災にあたって、岩室紳也、コンドームの達人、モトメタができたことは、インターネットを活用した災害関連の情報の共有サイトの立ち上げを通した情報の入手しにくさの解消(坂道の勾配を下げる)だったかもしれない。しかし、それはそもそもあのサイトを運営する後押しをしてくれている1000人近いメンバーの後押しがあったからこそである。陸前高田市に関わるきっかけをくれたのは愛弟子の未来型コンドームの達人であり、それを支えてくれているのがAIDS文化フォーラム in 横浜の仲間である。

このように、関係性の再構築を社会全体で作り上げていくことこそがヘルスプロモーションであるという壮大な夢を追いかけている私を毎年大学生につないでくださっている奈良女子大の高橋裕子先生にバトンを手渡して、この続きをお願いしたい。


次回予告

岩室紳也さん⇒高橋裕子さんへのバトン
「人がこころを動かされ、気がつけば行動も変わっているということが禁煙の世界でもいろいろあると思います。ぜひ人にやさしい健康づくりのコツを教えていただきたい」とのこと。

次回をお楽しみに!

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