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ピックアップ!

保健指導に関する情報、ツール、セミナーレポートを紹介しています。

研修レポート 平成30年度専門職向けスキルアップ研修会
「データヘルス計画に役立つ分析手法を学ぼう!」

2018年11月14日、コンベンションルームAP東京八重洲通りで開催された研修会を傍聴しました。
この研修会は、専門的知識を生かした戦略的・効果的な保健事業の展開に向けた知識の習得と技術の向上を目的としたものです。

今回のテーマは「データ分析」。生活習慣病予防の保健事業では、特定健康診査・特定保健指導のデータやレセプトなどを分析して課題を抽出し、事業の立案、実施、評価を経て次年度につなげていくというPDCAサイクルを回す必要があります。そのようななか、専門職はこれまでの活動の中で得てきた現場感を踏まえつつ、データを事業に生かす力が求められます。

本研修は具体的で活用度の高い貴重な内容でした。当日は、健康保険組合や組合に加入する事業所に所属する保健師、管理栄養士、看護師105名が参加して行われました。

(情勢報告)保健事業をめぐる情勢について

(講師:健康保険組合連合会 理事 棟重卓三氏)

健康保険組合(健保組合)の保健事業を取り巻く情勢報告がありました。健保組合の構造、現在の適用状況、財政状況のほか、保険者機能や役割などの解説がありました。
健保組合の保健事業費は、リーマンショック以降の財政難の状況下においても自助努力により水準を維持、今後も維持・拡大する方向にあります。一方、その内容についてはこの数十年で大きく変化しているということです。
かつては健診項目の充実やスポーツ大会の開催など、保健事業はいわば“企業の福利厚生代行”のような内容が中心でした。しかし、現在では健診における事後フォローや保健指導が、健康づくりにおいては個人の行動変容支援が重視されるなど、いまや保険者の役割は “企業の経営パートナー”というべきものへとシフトしているということです。
加入者の健康管理を効率的・効果的に進めるPDCAサイクルを回すデータヘルス計画は第二期に入っています。今後の健保組合は、事業所との連携(コラボヘルス)をおし進め、加入者・従業員の健康度の向上を図り、健康寿命延伸と医療費適正化を目指して特定健診・特定保健指導、重症化予防などの保健事業の取り組みを一層、強化していくということです。

講義 データヘルス計画に役立つ分析手法を学ぼう

(講師:滋賀医科大学アジア疫学研究センター・社会医学講座公衆衛生学部門 特任准教授 門田文氏)

データヘルス計画に関わるデータ分析とその手法・実践について、講義、演習、グループワークが行われました。
講義では生活習慣病に関する最新の知見に基づく情報提供が、演習では疫学に関する基礎知識と現場で使える分析手法の解説と実践があり、最後にグループワークが行われました。

(講義)生活習慣病に関する最近のエビデンス
データヘルス計画でターゲットとなる主な疾患は、医療費割合の多くを占める脳・心血管疾患および腎症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。本講義では2つの疫学研究を例に、これら生活習慣病のリスク要因と医療費の関連についてデータに基づいた解説がありました。

◆滋賀国保コホート研究(滋賀県国民健康保険団体連合会)
医療費を上げる要因を明らかにするため、8町村の国保加入者約4,500名の健康診査後10年間の医療費を把握。

◆特定健診・特定保健指導と医療費に関する研究(厚生労働科学研究)
生活習慣、循環器病疾患リスクと医療費の関係を検討するため、60万人弱の健康診査データとレセプトデータを突合。

研究の結果では、肥満、高血圧、喫煙習慣などの危険因子(リスク)が個人レベルで医療費に大きな影響をもっている一方、集団レベルの視点でみたときには人数の多い軽症リスクの人たちが医療費を押し上げていることが、データで示されていました。
門田氏は「リスクと医療費の関係は、個人レベルでは重症度に比例するが、集団レベルでは軽症、中等症、重症がほぼ同じぐらいに医療費に影響を及ぼす」ことを指摘、「軽症リスクの保有者は医療費適正化の絶好のターゲットである」とし、保健指導は医療費適正化に大きな意義をもっていることを示唆しました。
こうしたことを知るために役立つデータ分析の手法の一つが「集団寄与危険割合(Population Attributable Fraction: PAF)」です。この手法を使うと、個人レベルではなく、集団レベルでの医療費(発症率)の関係が評価できるということです。
特定保健指導は予防効果が高く、かつ医療費適正化にもつながることはわかってきたものの、現状では利用しない対象者が多く、リスクを放置したことで重症化してしまう方々が後を絶ちません。健診、そして保健指導の受診勧奨の重要性について、研究結果を知ることで一層強く感じることができました。

このほか、循環器疾患の発症予防のために、高血圧などの危険因子を医療で管理していくことが、将来的な医療費を抑えることにつながると示唆する結果もあり、適切な医療につなぐことの大切さについても、エビデンスによって裏付けられていることがわかりました。

(講義・演習)データヘルス計画に必要な疫学・統計学

前半の講義では、疫学とは何か、そして様々な疫学研究デザインとそれぞれのメリット・デメリットなどについて解説いただきました。疫学研究の結果を解釈する際には、バイアスや交絡など注意すべき点があることがわかりました。
後半の演習では、保健事業の現場で用いるデータの扱いなどに触れ、評価や医療費分析を行う際の注意点について解説いただきました。そして、先の講義で取りあげられた「集団寄与危険割合(Population Attributable Fraction: PAF)」について、例題(集団の中で高血圧によって心筋梗塞を発症する人のPAF)を用い、電卓で実際に算出しました。続いて参加者の方々は、持参してきた自健保組合の年代別有病率データから各自、PAFを算出することも行っていました。

(グループワーク)
講義、演習で身に付けた内容をもとに、グループワークが行われました。参加者の方々はグループに分かれ、事前に準備された3パターンの事業所(集団)の年代別有病率一覧を用い、集団寄与危険割合を算出して各事業所の優先課題や対策の検討、発表を行いました。

参加者の感想

参加後のアンケートでは、参加者全員から有意義な研修会だったと評価が高く、「統計や分析について研修を受けたい。」「データ分析をすることの大切さや、数値だけにとらわれず信頼あるデータなのかをしっかり見たうえで、分析利用することが重要だと学んだ。」「今までは有病率のみ着目していたが、年代別のPAFを算出することで、ハイリスクアプローチ、ポピュレーションアプローチのターゲットが明確になることが理解できた。」などの感想が寄せられました。

以上


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